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矯正治療において歯を抜かなくてはいけないケースは、大きく分けてふたつあります。
ひとつは、歯の大きさが顎に比べて大きい場合です。歯がきれいに並ぶために必要なスペースに対して顎の大きさが足りないと、歯をきれいに並べることができません。そのため、抜歯して顎に並べる歯の数を減らす必要があるのです。
現代人は昔に比べ、柔らかいものを食べる食生活がメインになっているため、顎が小さくなる傾向があります。結果、小さくなった顎にすべての歯をきれいに並べることができず、抜歯せざるをえないケースが生じるのです。
ふたつ目は、上下の顎のずれが大きい場合です。上下の顎がずれていると必然的に咬み合わせもずれてきます。その状態が長く続くと、歯列もずれてくるというわけです。上下のあごを矯正する方法としては外科手術もありますが、それを避けたい場合は抜歯をすることになります。
歯を抜かずに矯正治療を行うということは、歯を抜かずに顎のスペースに歯をきれいに並べられるだけのスペースをどうにかしてつくるということにほかなりません。
非抜歯矯正では、歯を抜いてスペースを作らずに矯正ができるとして、「床矯正」という矯正方法がよく知られています。この治療法では口の中に拡大ネジを設置し、ネジの作用によって徐々に歯列を外側へ広げる方法が取られています。この施術方法は歯を動かしやすい子どもに主に適用されるため、顎の骨が成長しきった大人の場合は施術による効果が得にくいのが難点とされています。
また、床矯正は適応可能な症例が限られている点についても把握しておく必要があるでしょう。
参照:日本臨床矯正歯科医会(https://www.jpao.jp/10orthodontic-dentistry/1020thinking/post_107.html)
大人の顎のスペースを確保する方法の一例として、歯槽骨を正常な位置に起こすという治療例があります。顎の骨は、本体部分である基底骨と歯を支える部分である歯槽骨のふたつのパーツによって構成されています。そして、歯を支える部分である歯槽骨は、普通はU字をしているのですが、なんらかの原因でV字型になってしまうことがあるのです。こうなると、正常な状態の歯槽骨に比べて歯が並ぶスペースが狭くなってしまい、歯並びが悪くなってしまいます。
この状態を改善するためには、内側に倒れている歯槽骨を正常な位置に起こすことになります。こうすることで歯槽骨をU字型に戻して、すべての歯をきれいに並べられるだけのスペースを確保するのです。
もうひとつの治療例としては、歯を奥に移動させることで歯がきれいに並ぶスペースを確保するというものが挙げられます。
永久歯が何らかの原因で本来の位置よりも前方に移動してしまうと、そのずれに合わせてほかの歯もずれてしまい、歯列が乱れてしまいます。これを矯正するためには、矯正用のインプラントを奥歯の歯茎に埋入し、それを支点にして対象となる歯を移動させるのです。
矯正用のインプラントは、歯を失った際に使用されるものと比べて小さいので、通常のインプラントと比較して体への負担は抑えられます。また、矯正完了後には取り除くことができます。
永久歯は一度抜いたら再び生えてくることはありません。そのため、矯正治療の際にはなるべく歯を抜きたくないという人は多いでしょう。歯科医院の方も、歯列矯正に限らず可能な限り天然の歯を残す治療を行っています。しかし、患者さんの口の中の状態や症状によっては、どうしても歯を抜かなくてはいけないこともあるもの。そのため、矯正治療は必ずしも歯を抜かずにできるわけではないことを理解しておきましょう。
参照:日本臨床矯正歯科医会(https://www.jpao.jp/15news/1525trendwatch/vol-25)
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